夏は、夜。月の頃は、さらなり。闇もなほ。蛍の多く飛び違ひたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。雨など降るも、をかし。
輝くこと天に舞う星のごとく
簾にとどまれば夜明珠のごとく
光を拾う君に逢い生を惜しまず
また節子が螢を捕って蚊帳の中にいれておいたのが朝起きてみると半数近くが死んでいた時の事。
朝になると,蛍の半分は死んで落ち,節子はその死骸を壕の入り口に埋めた,「何しとんねん」「蛍のお墓つくってんねん」うつむいたまま,お母ちゃんもお墓に入ってんやろ,こたえかねていると,「うち小母ちゃんにきいてん,お母ちゃんもう死にはって,お墓の中にいてるねんてんて」はじめて清太,涙がにじみ,「いつかお墓へいこな,節子覚えてえへんか,布引の近くの春日野墓地いったことあるやろ,あしこにいてはるわ,お母ちゃん」樟(くす)の樹の下の,ちいさい墓で,そや,このお骨もあすこ入れなお母ちゃん浮かばれへん。何でホタル
すぐ死んでしまうん?
あたりがわずかに残る明るさから刻々と墨一色の暗さに移る微妙な時に、両岸の叢から蛍がすいすいと、すすきと同じような低い弧を描きつつ真ん中の川に向って飛ぶのが見えた。見渡す限り、一筋の川の縁に沿うて、どこまでもどこまでも、果てしもなく両岸から飛び交わすのが見えた。それが今まで見えなかったのは、草が丈高く伸びていたのと、その間から飛び立つ蛍が、上の方に舞い上がらずに、水を慕って低く揺曳するせいであった。 が、その、真の闇になる寸刻前、落窪んだ川面から濃い暗黒が這い上がって来つつありながら、まだもやもやと近くの草の揺れ動く気配が視覚に感じられる時に、遠く、遠く、川の続く限り、幾筋とない線を引いて両側から入乱れつつ点滅していた、幽鬼めいた蛍の火は、今も夢の中にまで尾を曵いているようで、目をつぶってもありありと見える。
自分がこうして寝床の中で目をつぶっているとこの真夜中にも、あの小川のほとりではあれらの蛍が一晩中音もなく明滅し、数限りもなく飛び交うているのだと思うと、云いようのない浪漫的な心地に誘い込まれるのであった。何か、自分の魂があくがれ出して、あの蛍の群れに交じって、水の面を高く低く、揺られて行くような、 そういえばあの小川は、蛍を追って行くと、随分長く、一直線に、どこまでも続いている川であった。
夜明珠(やめいじゅ)超希少な天然もの、古代の夜明珠. かつては中国の王族しか所有できなかった極く希少で神秘的な秘密の天然貴石です。伝説、神話の龍、不死鳥の珠とされ、持つ者に健康、
昔男ありけり。人のむすめのかしづく、いかでこの男にもの言はむと思ひけり。うち出でむことかたくやありけむ、もの病みになりて、死ぬべきときに、
「かくこそ思ひしか」と言ひけるを、親聞きつけて、泣く泣く告げたりければ、
惑ひ来たりけれど、死にければ、つれづれと篭りをりけり。
時は六月の晦日いと暑きころほひに、宵は遊びをりて、夜更けてやや涼しき風吹きけり。 蛍高く飛びあがる。この男、見ふせりて、
「行く蛍 雲の上まで 住ぬべくは 秋風吹くと 雁に告げこせ」
暮れがたき 夏の日暮らし ながむれば そのこととなく ものぞ悲しき伊勢物語の行く蛍。